三井物産(8031)

銘柄情報

当サイトに掲載されている投資に関する見解は、個人の主観・感想を元に作成したものであり、特定の銘柄・金融商品の勧誘や上昇・下降を予想/示唆するものでもありません。また、運用成果や投資収益を保証するものではありません。最終的な投資の意思決定はご自身の責任と判断でお願いします

※本記事は2023年3月期決算発表時点の情報を元に作成してます

はじめに

結論

当サイト独断判定B+(組み入れを検討したい)

配当水準 : Aー
利回り3%台(執筆時点)で過去10年で減配1回あるが増加傾向配当性向は直近予想20%台で無理のない水準で配当方針も金額ベース(150円下限)累進配当政策を採用。欧米景気が悪化した場合の主力の資源価格への影響には注意が必要も基本的には減配リスクは低い

財務指標 : B+
売上は2021年まで横這い傾向直近2年で大きく上昇、経常利益率は直近9%台で大手商社として平均水準自己資本比率も40%台と比較的良好。営業キャッシュフローは過去10年プラスで現金資産も十分

事業内容 : B-
ロシア事業の地政学的リスクに注意が必要。大きくはないが中国事業の地政学的リスクもあり。海外事業比率が多めで景気敏感性も高いため、今後欧米の景気が悪くなった場合のインパクトに注意

配当水準


  • 配当利回り:3.5% (24年3月期予想)※執筆時点の株価ベース

若干物足りないですが、日本株で高配当と言われる水準の3%は上回っていますので合格点です。

  • 配当性向:25.7%(24年3月期予想)
  • 配当金(絶対額): 直近10年増加傾向(減配1回)

配当金は2017年に一度減配していますが、2014年以降10年間で59円から140円まで増加傾向です。特に直近では、2021年の85円から2022年は105円、2023年は140円と急速に増加しています。

これは、配当性向を上げて増配したわけではなく、逆に配当性向は2021年までの30%~40%前後から10%台後半に下がっていますので、主に資源価格の上昇により利益が大幅に増えたことがその理由です。

配当方針は、今後の2026中期計画期間を対象に下限を150円とする累進配当政策を採用しています。

昨今のインフレと金利の上昇により欧米の景気の先行きは不透明になっており、景気が悪化すると資源価格も下がることが想定されます。会社予想でも23年は減益予想となっています。

ただ、減益でも23年の配当金額は増配予想で、配当性向も25.7%とまだ低めです。配当方針でも2024年予想金額(150円)を下限とし累進配当政策を採用していますので、減配リスクは低いでしょう。ただ、欧米の景気悪化が深刻化・長期化した際の減配リスクをある程度は念頭に置いておくと良いでしょう。

財務指標


  • 売上 : 過去10年横ばい傾向(直近2年で大きく上昇)

2014年からの10年間で、約5.7兆円から約14.3兆円に大きく増加しています。2014年~2018年は5兆円前後で横ばいでしたが、2019年から7兆円前後になり、2022年からは10兆円以上になっています。

2019年の増加は会計基準の変更が主要因のため2021年まで実質的には横ばい傾向と考えます。ただし、2022年からの増加は純粋な販売増によるものです。

  • 経常利益率:9.75%(23年3月期実績)※営業利益は不明

営業利益は決算書に記載が見つけられませんでしたが、経常利益率は2017年以降は2021年は5%台まで一時的に低下していますが概ね8~11%程度の間で推移しています。大手商社では平均的な水準でしょう。

  • 自己資本比率:41.4%(23年3月期実績)

40%を越えていますので、優秀とまでは言えませんが問題無いレベルです。今後金利が上昇した際に減益・減配のリスクはありますが、倒産するリスクは低いでしょう。

  • フリーキャッシュフロー:直近10年でマイナス2回
  • 現金資産:直近配当の約7年分(23年3月期実績)

ここ10年でフリーキャッシュフローのマイナスが2回ありますが、営業キャッシュフローは全てプラスになっています。現金は2023年時点で約1.4兆円の残高があり、これは直近配当実績の約7年分と十分な金額です。

営業キャッシュフローはプラスを10年以上キープしており現金残高も十分ありますので景気悪化等で一時的に利益が減少した際も、しばらくは現金資産を取り崩して配当を維持することは可能でしょう。

事業内容


  • 海外事業比率:45.8%
  • 地政学的リスクがある国・地域での事業:ロシア、中国

事業内容としては日本有数の総合商社で、鉄鉱石・原油・ガスなど資源関連、自動車、船舶など機械・インフラ関連が利益の中心です。

地政学リスクとしては、ホームページに中国拠点が14拠点ほど記載があります。売上比率はわかりませんが、中国を含む「その他」地域の売上比率は16%程度で、その中のさらに一部と考えると中国事業の地政学的リスクはありますが、そこまで大きくはないと考えます。

また、ロシアのLNG事業に参画しており、こちらは既に1,000億円規模の損失を引当て済みですが、今後の状況によってはさらなる損失の可能性にも注意が必要です。

また、海外事業の比率も45.8%と大き目のため、今後欧米の景気が悪くなった場合のインパクトはそれなりにあると思われます。

  • 若年層依存度:なし

鉄鉱石・原油・ガスなど資源関連、自動車、船舶など機械・インフラ関連から主に利益を得ており、若年層に偏ったビジネスではないため、今後の少子高齢化進行に伴う売上への影響は少ないと考えられます。

  • 景気敏感性:高い

ベータ値は執筆時点で「1.07」であり景気敏感性は高めです。そのため、今後景気が悪化した場合の影響には注意が必要です。

まとめ

「配当水準」は累進配当政策を採用しており減配リスクは低く、「財務指標」も大きな問題はありません。

「事業内容」にロシア事業の地政学的リスクがあり、海外比率と景気敏感性も高めのため、昨今のインフレと金利上昇に伴い欧米の景気が悪化した際の減益・減配のリスクにも注意が必要です。

欧米景気悪化時のリスクには一定の注意が必要ですが、財務良好で減配リスクも小さく、長期的に安定した高配当が期待できるため高配当投資の一角として検討に値するでしょう。

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高配当株式投資は、財務体質がしっかりした安定配当が期待できる企業への分散投資が重要です。分散を十分に効かせるためには最低でも数十社に分散させることが望ましいです。

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