※本記事は2023年3月期決算発表時点の情報を元に作成してます
はじめに
結論
当サイト独断判定:Bー(慎重に組み入れを検討)
配当水準 : Aー
利回り3%台(執筆時点)で過去10年増配傾向で減配無し。配当方針は配当性向ベース(30~40%)だが、配当性向よりも減配を回避する姿勢があり、直近の配当性向も50%弱で無理のない水準のため減配リスクは低い。
財務指標 : B
売上は過去10年増加傾向。営業利益率は直近で業界平均以下の4%台に減少。自己資本比率は40%台と比較的良好。営業キャッシュフローは過去10年プラスで現金資産はそこそこあり。
事業内容 : C
中国の事業比率が1割程度あり、製造・販売拠点も多めのため地政学的リスクは高い。欧米事業の比率がそれなりにあり景気敏感性も高いため、今後欧米の景気が悪くなった場合のインパクトに注意。
配当水準
- 配当利回り:3.8% (24年3月期予想)※執筆時点の株価ベース
日本株で高配当と言われる水準の3%を上回っていますので合格点です。
- 配当性向:49.9%(24年3月期予想)
- 配当金(絶対額): 直近10年増加傾向(減配無し)
配当金は2014年以降10年間で17円から36円まで減配せずに増加しています。
配当方針は配当性向ベース(30%~40%)としていますが、実際は直近10年で23.5%~59.1%と幅が大きく、配当性向を多少上げても減配を回避する姿勢を感じます。
方針が配当性向ベースですが、減配回避の姿勢があり配当性向も50%弱と無理のない水準ですので、今後も減配せずに安定した配当が十分期待できるでしょう。
財務指標
- 売上 : 過去10年増加傾向
2014年以降10年間で約1兆9000億円から約2兆7000億円まで概ね右肩上がりで増加しています。
- 営業利益率:4.71%(23年3月期実績)
過去10年は8~9%前後で推移してきましたが、直近の2023年は4%台まで大きく減少しています。この理由については、主に需要減速による販売数量減と操業度低下、原燃料価格高騰の影響としています。
2024年は下期から回復を見込み通期で5.58%予想となっていますが、それでも「化学」業種の平均の8%前後から見ても劣る利益率となっており、今後の営業利益率の推移には注意が必要です。
- 自己資本比率:48.1%(23年3月期実績)
40%を越えていますので、優秀とまでは言えませんが問題無いレベルです。今後金利が上昇した際は減益・減配のリスクはありますが、倒産するリスクは低いでしょう。
- フリーキャッシュフロー:10年間でマイナス4回
- 現金資産:直近配当の約5年分(23年3月期実績)
ここ10年でフリーキャッシュフローはマイナスが4回ありますが、営業キャッシュフローは常にプラスとなっています。
現金は2023年時点で約2479億円の残高があり、これは直近配当実績の約5年分と十分ではありませんがそこそこの金額となっております。
営業キャッシュフローはプラスを10年以上キープしており現金残高もそこそこあるため景気悪化等で一時的に利益が減少した際も、しばらくは現金資産を取り崩して配当を維持することは可能でしょう。
事業内容
- 海外事業比率:48.1%
- 地政学的リスクがある国・地域での事業:中国(9.7%)
主な事業内容としては、ケミカル/プラスチック材料や、電池用セパレータ等の化学製品の製造・販売、住宅の建設・販売となっております。
ヨーロッパを含む「その他」地域の事業比率が23.9%あり、米国の事業比率も14.5%となっているため、今後欧米の景気が悪くなった場合のインパクトはそれなりにあるでしょう。
中国での事業比率が9.7%あり、ホームページにも中国・香港の製造・販売拠点が20か所以上記載されているため地政学的リスクはかなり高いと考えます。
- 若年層依存度:なし
化学製品の製造・販売、住宅の建設・販売が主な事業であり、若年層に偏ったビジネスではないため、今後の少子高齢化進行に伴う売上への影響は少ないと考えられます。
- 景気敏感性:高い
業種分類としては景気動向に敏感な「化学」に該当し、ベータ値は執筆時点で「1.36」であり景気敏感性は高いと考えます。そのため、今後景気が悪化した場合の影響は大きいと想定します。
まとめ
「配当水準」は高配当株式投資に適した内容となっています。
「財務指標」は直近の営業利益率の低下に注意が必要です。
「事業内容」は中国の地政学的リスクに注意が必要です。欧米の事業比率もそれなりにあり、欧米の景気悪化時の影響にも注意が必要です。
財務良好で倒産リスクも小さいため、基本的には安定した高配当が期待できますが、地政学的リスクが高く、欧米景気悪化時のリスクもそれなりにあるため、慎重に検討した上での投資判断が必要でしょう。
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