丸紅 (8002)

銘柄情報

当サイトに掲載されている投資に関する見解は、個人の主観・感想を元に作成したものであり、特定の銘柄・金融商品の勧誘や上昇・下降を予想/示唆するものでもありません。また、運用成果や投資収益を保証するものではありません。最終的な投資の意思決定はご自身の責任と判断でお願いします

※本記事は2023年3月期決算発表時点の情報を元に作成してます

はじめに

結論

当サイト独断判定B+(組み入れを検討したい)

配当水準 : A
利回り3%台(執筆時点)。過去10年増配傾向減配2回あり配当方針は総還元性向ベース(30%~35%)累進配当政策を採用。今後の資源価格下落による減益リスクに注意も、配当性向が直近予想30%台で無理のない水準で、累進配当政策のため減配リスクは低い

財務指標 : B+
売上は過去10年横這い傾向も直近数年で大きく上昇。営業利益率は直近3%台と低いが商社のインフレ耐性を考慮すると問題ないレベル。自己資本比率は30%台で若干低め営業キャッシュフローは過去10年プラスで現金資産は十分

事業内容 : Bー
中国事業の地政学的リスクが一定程度あり。米国事業が4割以上あり景気敏感性も高いため、今後欧米の景気が悪くなった場合のインパクトに注意

配当水準


  • 配当利回り:3.8% (24年3月期予想)※執筆時点の株価ベース

日本株で高配当と言われる水準の3%を上回っていますので合格点です。

  • 配当性向:31.6%(24年3月期予想)
  • 配当金(絶対額): 直近10年増加傾向(減配2回)

配当金は2014年以降10年間で25円から78円まで増加傾向です。直近では、2022年に33円⇒62円、2023年は62円⇒78円と急速に増加しています。

これは、配当性向を上げて増配したわけではなく、主に資源価格の上昇により利益が大幅に増えたことがその理由です。

配当方針は、総還元性向ベース(30%~35%)ですが、2023年から累進配当政策(原則減配なし)を採用しています。

昨今のインフレと金利の上昇により欧米の景気の先行きは不透明になっており、景気が悪化すると資源価格も下がることが想定されます。会社予想でも24年は減益予想となっていますが、累進配当政策となっているため配当は23年と同額予想になっています。

配当方針が還元性向ベースで過去減配の実績もありますが、直近の配当性向は30%と無理の無い水準であり、累進配当政策を採用しているため、今後も減配せずに安定配当の維持を十分期待できるでしょう。

財務指標


  • 売上 : 過去10年横這い傾向(直近で大幅に増加)

2020年までは約7.5兆円前後で横這い傾向でしたが、直近では2020年/2021年に6兆円台に一度落ち込み、その後約9.2兆円まで大幅に増加しています。

  • 営業利益率:3.71%(23年3月期実績)

営業利益率は2014年から2021年は1.5%~2.3%程度で推移していましたが、2022年から3%台に上昇しています。

3%前後が平均の「卸売業」業種としては平均的な水準です。物足りなさはありますが、商社はインフレ耐性が高いことを考慮するとそこまで気にするレベルではないでしょう。

  • 自己資本比率:36.2%(23年3月期実績)

30%台の若干低めの自己資本比率となっています。倒産とまではいかなくても、今後金利が上昇した際の減益・減配のリスクは大きく注意が必要です。

  • フリーキャッシュフロー:直近10年でマイナス2回
  • 現金資産:直近配当の約7年分(23年3月期実績)

ここ10年でフリーキャッシュフローがマイナスが2回ありますが、営業キャッシュフローは全てプラスになっています。現金は2023年時点で約6089億円の残高があり、これは直近配当実績の約7年分と十分な金額です。

営業キャッシュフローはプラスを10年以上キープしており現金残高も十分ありますので景気悪化等で一時的に利益が減少した際も、しばらくは現金資産を取り崩して配当を維持することは可能でしょう。

事業内容


  • 海外事業比率:62.7%
  • 地政学的リスクがある国・地域での事業:中国、ロシア

事業内容としては日本有数の総合商社で、食品・穀物・エネルギーなどが中心です。

地政学リスクとしては、ホームページに中国拠点が15拠点ほど記載があります。売上比率はわかりませんが、中国を含む「その他」地域の売上比率は20%程度で、その中のさらに一部と考えると中国事業の地政学的リスクはそこまで大きくはないと考えます。

ロシア事業もありますが、こちらは既に多くの損失を引当て済みで、「2023年3月末現在、ロシアにおけるグロスエクスポージャーは6億円」と記載されているためさらなる損失リスクは限定的でしょう。

また、米国事業が40%以上を占めるため、今後欧米の景気が悪くなった場合のインパクトは大きいと思われます。

  • 若年層依存度:なし

食品・穀物・エネルギーなどの卸売りが主な事業で、若年層に偏ったビジネスではないため、今後の少子高齢化進行に伴う売上への影響は少ないと考えられます。

  • 景気敏感性:高い

ベータ値は執筆時点で「1.46」であり景気敏感性は高いです。そのため、今後景気が悪化した場合の影響には注意が必要です。

まとめ

「配当水準」は問題ありません。

「財務指標」は自己資本比率が若干低めな点に注意が必要です。

「事業内容」は米国事業が4割以上あり景気敏感性も高いため、今後欧米の景気が悪化した際の減益・減配のリスクに注意が必要です。

しかしながら、累進配当政策を採用しており、財務も比較的良好で倒産リスクも小さいため、基本的には安定した高配当が期待できるため高配当投資の一角として検討に値するでしょう。

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