住友商事(8053)

銘柄情報

当サイトに掲載されている投資に関する見解は、個人の主観・感想を元に作成したものであり、特定の銘柄・金融商品の勧誘や上昇・下降を予想/示唆するものでもありません。また、運用成果や投資収益を保証するものではありません。最終的な投資の意思決定はご自身の責任と判断でお願いします

※本記事は2023年3月期決算発表時点の情報を元に作成してます

はじめに

結論

当サイト独断判定B(組み入れを検討しても良い)

配当水準 : B+
利回り4%台(執筆時点)。過去10年増配傾向1回減配。配当方針は配当性向ベース(30%)で、今後の資源価格下落による減益リスクに注意も、配当性向が直近予想30%台で無理のない水準あり減配リスクは低い

財務指標 : B
売上は基本的に右肩上がりに増加傾向。営業利益率は直近6%台で業界平均以上だが、自己資本比率は30%台と若干低め営業キャッシュフローは過去10年プラスだが現金資産は直近配当の約4年分と少なめ

事業内容 : B
若年層に依存しないビジネスだが、中国・ロシア事業の地政学的リスクが一定程度あり。欧米事業がそこそこあり景気敏感性も高いため、今後欧米の景気が悪くなった場合のインパクトに注意

配当水準


  • 配当利回り:4.5% (24年3月期予想)※執筆時点の株価ベース

日本株で高配当と言われる水準の3%を大きく上回っていますので文句なく合格点です。

  • 配当性向:30.9%(24年3月期予想)
  • 配当金(絶対額): 直近10年増加傾向(減配1回)

配当金は、2021年の赤字転落の際に一度減配していますが、2014年以降10年間で47円から115円と増加傾向です。

特に直近では、2021年の70円から2022年は110円、2023年は115円と急速に増加しています。これは、配当性向を上げて増配したわけではなく、資源価格の上昇等により利益が大幅に増えたことがその理由です。

配当方針は、配当性向ベース(30%)ですが、DOE3.5〜4.5%の範囲を越える部分は自社株買いとする場合もあるとしています。

今後景気が悪化すると資源価格も下がることが想定され、直近で大きく増加した利益を維持できるか注意が必要です。会社予想でも24年は減益予想となっています。

配当方針が配当性向ベースで過去減配の実績もありますが、直近の配当性向は30%と無理の無い水準であり、今後も大きな減配はせずに安定した配当を十分期待できるでしょう。

財務指標


  • 売上 : 過去10年増加傾向(21年に一時減少)

2014年からの10年間で、21年の赤字転落時は一時減少しましたが、約3.3兆円から約6.8兆円まで基本的に右肩上がりに増加しています。

営業利益率:6.2%(23年3月期実績)

営業利益率は赤字の年以外は概ね3%~5%程度で推移しています。

一般的には低めの利益率ですが、3%前後が平均の「卸売業」業種としては比較的良好な水準であり、商社はインフレ耐性が高いこともあり大きな問題ではないでしょう。

  • 自己資本比率:37.4%(23年3月期実績)

30%台の若干低めの自己資本比率となっています。倒産とまではいかなくても、今後金利が上昇した際の減益・減配のリスクは大きく注意が必要です。

  • フリーキャッシュフロー:直近10年でマイナス1回
  • 現金資産:直近配当の約4年分(23年3月期実績)

ここ10年でフリーキャッシュフローがマイナスが1回ありますが、営業キャッシュフローは全てプラスになっています。現金は2023年時点で約6569億円の残高があり、これは直近配当実績の約4年分と若干心許ない金額です。

現金残高が配当と比較すると少な目ですが、営業キャッシュフローはプラスを10年以上キープしており景気悪化等で一時的に利益が減少した際に、ある程度は現金資産を取り崩して配当を維持することは可能でしょう。

事業内容


  • 海外事業比率:61.3%
  • 地政学的リスクがある国・地域での事業:中国、ロシア

事業内容としては日本有数の総合商社で、鋼材・鋼管などの金属、石炭・鉄鉱石等の資源が中心です。

地政学リスクとしては、ホームページに中国拠点が10拠点以上記載がありますが、商社事業の特性から製造設備等は存在しないと考えます。

売上比率についても、単体の比率はわかりませんが中国を含む「東アジア」地域の売上比率は6%程度でその中のさらに一部と考えると中国事業の地政学的リスクは限定的と考えます。

ロシア事業もありこちらは既に多くの損失を引当て済みですが、2023年3月末現在でロシアにおけるグロスエクスポージャーはまだ555億円存在しており、さらなる損失リスクに一定の注意が必要です。

また、比率はわかりませんが欧州事業が存在し、米国事業も17%程度あるため今後欧米の景気が悪くなった場合のインパクトにも注意が必要です。

  • 若年層依存度:なし

金属や資源などの卸売りが主な事業で、若年層に偏ったビジネスではないため、今後の少子高齢化進行に伴う売上への影響は少ないと考えられます。

  • 景気敏感性:高い

ベータ値は執筆時点で「1.14」であり景気敏感性は高いです。そのため、今後欧米の景気が悪化した場合の影響には注意が必要です。

まとめ

「配当水準」は良好ですが、「財務指標」で自己資本比率と現金資産が若干低めな点に注意が必要です。

「事業内容」に中国・ロシア事業の地政学的リスクが若干あります。また欧米事業がそれなりにあり景気敏感性も高めのため今後欧米の景気が悪化した際の減配リスクに注意が必要です。

欧米景気悪化リスクに一定の注意が必要で財務も若干心許ありませんが、倒産リスクは小さく基本的には安定した高配当が期待できるため高配当投資の一角として検討しても良いでしょう。

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